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プロジェクト管理の疑問:計画書は不要?アジャイルなイシュー管理と実装計画書の役割

プロジェクト管理の疑問:計画書は不要?アジャイルなイシュー管理と実装計画書の役割
2025-06-15
プロジェクト管理の疑問

プロジェクト管理の疑問:計画書は不要?アジャイルなイシュー管理と実装計画書の役割

Web アプリケーション開発において、私たちは日々、新しいタスクや予期せぬ問題に直面します。 既存の計画を進めている最中に、「あ、これも必要だ!」「このタスク、思ったより複雑だから細分化したい」と感じることは少なくありません。

このような状況で、「途中で新しいイシューを作成しても大丈夫なの?」という疑問が浮かびます。 そして、もしそれが許されるのであれば、「そもそも最初の実装計画書って、そんなに厳密に作る必要がないんじゃないか?適当でいいのでは?」という疑問に発展することもあるでしょう。

今回は、この二つの疑問を深掘りし、アジャイルなイシュー管理と実装計画書がそれぞれどのような役割を果たし、どのように相互に補完し合うべきかについて解説します。

1. イシュー管理の柔軟性:途中で新しいイシューを作成するメリット

開発プロジェクトは、生き物のように変化します。初期段階で全てを完璧に予測し、固定された計画を立てることは現実的ではありません。 だからこそ、イシュー管理システム(GitHub Issues などが代表的)の柔軟性が重要になります。

途中で新しいイシューを作成することは、全く問題ありませんし、むしろ推奨される行為です。

これには以下のようなメリットがあります。

  • 新しい情報の発見への迅速な対応: 開発を進める中で、当初は予期していなかった機能要件、改善点、バグなどが明らかになることがあります。これらをすぐにイシューとして記録することで、見落としを防ぎ、適切なタイミングで対応計画を立てられます。
  • タスクの細分化と管理のしやすさ: 大きなタスクは、途中でさらに小さなサブタスクに分解することで、進捗の追跡が容易になります。各サブタスクを独立したイシューとして管理することで、担当者の割り当て、期限設定、進捗報告がより明確になります。
  • 柔軟なプロジェクト運営: 厳密な計画に固執するのではなく、プロジェクトの状況や優先順位の変化に応じて、イシューを柔軟に追加・修正できることは、変化に強い開発を実現します。
  • 透明性の向上: 新しいタスクや問題がイシューとして明確に記録されることで、プロジェクトに関わる全員が、現在の作業と今後の対応事項について共通の認識を持つことができます。

このように、イシューは日々の開発における「具体的な行動指針」として、その場の状況に柔軟に対応するための強力なツールです。

2. 実装計画書の不変の価値:なぜ「地図」が必要なのか

イシューが柔軟に作成できるとなると、「ならば実装計画書は適当でいいのか?」「そもそも必要ないのでは?」と感じるかもしれません。 しかし、これは誤解です。

例えるなら、 実装計画書はプロジェクト全体の「地図」や「戦略」であり、イシューはその地図上で日々進むべき「具体的な道筋」や「戦術」 です。 どちらか一方が欠けても、プロジェクトは効率的かつ確実に目標に到達することは困難になります。

実装計画書が「いい加減」ではダメな理由、そしてその不変の価値は以下の通りです。

  • プロジェクトの方向性と目的の明確化: 実装計画書は、「何を作るのか?」「なぜ作るのか?」という大局的な目的を定義します。これにより、チーム全員が同じ方向を向いて作業を進めるための羅針盤となります。
  • 高レベルな計画とマイルストーンの設定: プロジェクトを複数の大きなフェーズに分割し、各フェーズで達成すべき目標や成果物を設定します。これにより、プロジェクトの全体像を把握し、進捗を長期的に管理できます。
  • 主要な技術的方針と依存関係の特定: どのような技術を採用するのか、なぜその技術を選ぶのかといった方針、そして特定のタスクや技術要素が他の要素の前提となる重要な依存関係を明示します。これにより、手戻りや無駄な作業を防ぎ、効率的な開発順序を計画できます。
  • コミュニケーションと認識合わせのツール: 開発チーム内外のステークホルダーに対して、プロジェクトの進め方を共有し、合意を形成するための共通言語となります。
  • リスクの早期発見と対策: 初期段階で計画を練ることで、潜在的なリスクや課題を早期に特定し、事前に対策を講じることができます。

もし実装計画書が「いい加減」であれば、イシューがどんなに丁寧に管理されていても、最終的にプロジェクトがどこに着地するのか不透明になり、効率の低下、手戻りの増加、意思決定の遅延、そして最悪の場合、プロジェクトの失敗につながる可能性があります。

3. 計画書とイシューの相補性:最強のプロジェクト管理

変化の速い現代の開発において、完璧に固定された計画を求めることは非現実的です。 しかし、羅針盤となる「しっかりした計画」はやはり不可欠です。

  • 実装計画書は、プロジェクト全体の大局的なビジョンと戦略を提供します。これは、船が最終的に到達すべき港を示す地図のようなものです。
  • イシューは、その地図に基づきながら、日々の天候や海の状況(予期せぬ課題や新しい情報)に合わせて具体的な航路を調整する役割を果たします。

両方を適切に活用することで、以下のような理想的なプロジェクト管理が実現できます。

  1. 見通しの良さ: 全体像と詳細が常に明確であるため、プロジェクトの状況を正確に把握できます。
  2. 効率的な開発: 依存関係を考慮した計画と、具体的なタスクへの落とし込みにより、無駄なく効率的に作業を進められます。
  3. 変化への対応力: 新しい情報や要件に柔軟に対応しつつも、大局的な目標を見失うことがありません。
  4. 高いコード品質と保守性: 各タスクが明確に定義され、適切に管理されることで、コードの品質も向上し、長期的な保守が容易になります。

まとめ

「イシューを途中で作成できるから実装計画書は不要」という考え方は、プロジェクト管理の本質を見誤る可能性があります。 実装計画書はプロジェクトの「なぜ」と「どこへ」を定義し、イシューは「何を」「どのように」を日々のレベルで管理します。

これら二つのツールを効果的に組み合わせることで、開発チームは迷うことなく、変化に対応しながら、最終的な目標へとプロジェクトを力強く推進していくことができるでしょう。

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